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「足売り婆さん」 やあ、久しぶり。娯楽遊だよ☆俺ってさ、部活系の話にしか出てないよね。一応契約者なのに。そうそう、最近この辺で都市伝説 を見たって情報が有るんだ。これって俺の出番だよね☆ 遊「この辺で出るって聞いたんだけどなぁ」 そんなことを言いながら歩いていると、お婆さんの声が聞こえた 「足は要らんかえー足は要らんかえー」 この声、この台詞。間違いなく『足売り婆さん』。足は要らんかと聞いてきて、要ると答えれば足を無理矢理付けられ、要らないと答えれば 足をとられる、と言うものである。 遊「足売り婆さんか。…いくよ、サーカス☆団!」 遊はそう言ってポケットからテントを取り出した。そしてそこから… 「団長~呼びました~?」玉乗りをしながらジャグリングするピエロが 「アンタ達、団長がお呼びよ!」「「ガウ!!」」熊やライオンを従える猛獣使いが 「団長」「あたし達に」「「お任せ下さい!!」」空中ブランコを華麗に操る男女が 「……がんばります」綱渡りをする男が、飛び出してきた。 遊「よし、今回のターゲットはそこにいる『足売り婆さん』だよ☆」 足婆「足は要らんのかえ?」 ピエ「そこにいるやつですね~」 猛獣「生憎、足なら間に合ってるわ」 足婆「要らんのなら…寄越せ!!!」 猛獣使いのその言葉に反応し、足売り婆さんが飛び掛ってくる。しかし、 ピエ「危ないですよ~婆さん」 その攻撃はピエロの大玉で阻まれてしまう 足婆「な……」 空中「僕たちの」「絆を」「「見せてあげる」」「よ!」「わ!」 空中ブランコの男女が足売り婆さんを高く飛ばす。 綱渡「……!」 綱渡りの男が棒で足売り婆を突き上げる 猛獣「レオ、あの火の輪を潜りなさい!」「ガルル!!」 猛獣使いに命令されたライオンが火の輪に飛び込む。…足売り婆を巻き込みながら 足婆「ぐ…熱い…焼けるぅ……!!」 当然、足売り婆の体は燃え上がる。 遊「よし。ここまですればもう動けないよね。さ、〈勧誘〉してやって☆」 ピエ「了解しました~」 遊がそう指示すると、ピエロたちは足売り婆を紐で結んだ。そしてピエロたちは目の前に不思議な穴 のようなものをつくり…そこに足売り婆を放り込んだ 遊「さ、これでお前も僕のサーカス団の仲間入りさ☆『サーカスは人拐い』…これが俺の契約した都市伝説だよ☆」 ピエロたちが放り込んだのは異空間にあるサーカスの楽屋。そこに入れられれば強制的にサーカス団の一員となるのだ。 遊「ふぁーあ。お前たち、もう戻っていいよ☆」 「「「「「では、お言葉に甘えて」」」」」「「ガウッ!」」 こうして娯楽遊の都市伝説退治が終わるのでした 続く
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エーテルの、その推理に イクトミは小さく笑った 「8割から9割方、俺と同じ推論だな」 「残り1割から2割は違う、と?」 あぁ、と頷くイクトミ ゆっくり、順番に告げてくる 「エイブラハムの契約都市伝説……まぁ、公にされてる二つ、飲まれる前から契約してたってのは、そのままじゃないかと思う。だが、救世主に飲まれたってのは、うさん臭いな」 元々は聖なるものと契約していたとしても それ以上の邪悪に飲まれる可能性は、ある 「メルセデスがバルディエルじゃなくて、クローセルってのも同感だ。どうして「教会」にもぐりこんだのかは、同じく推理できないがね」 材料不足だからな、と呟く 何か材料が見つかれば、推理できるかもしれないが 「…お前と違う答えを推理したのは、悪魔憑き事件について。多分、悪魔憑き事件自体は解決してる」 「悪魔憑き事件「自体」は?」 「そう、そっちは、多分もう終わった事件……問題は、その事件で、エイブラハムの傍にいた女契約者が死んでいて……代わりに、「ゲルトラウデ・オラーリャが失踪し、「教会」に同姓同名、全く同じ容姿の女が現れて、エイブラハムの右腕になっている」と言う事実だ」 そう、それは、まるで 死んだ女契約者のポジションに、ゲルトラウデが収まったような…… 「……こっからは、ほとんど俺の推測だ。そうだ、と言い切れる材料は存在しない」 そう、断りを入れてから イクトミは、続けてくる 「…死んだ女契約者、そいつの都市伝説が、ゲルトラウデに移ったんじゃないか?」 「………移った?」 「そう。ゲルトラウデは元々「ハラリエル」の契約者だったが………そこに、さらに多重契約をした、もしくは」 それは ある種、もっとタチの悪い可能性 「他の都市伝説に、肉体を乗っ取られたんじゃないのか?」 「多重契約ではなく、何者かがゲルトラウデの体を乗っ取って、好き勝手に行動している、と言うことか?」 「あぁ。まぁ、契約って形じゃなくて、たんに取り憑かれて乗っ取られたのか、それとも多重契約で飲まれて精神取られたか。どっちも可能性はあるけどよ。それがしっくりくる気がするんだよ」 だからこそ ゲルトラウデは、エイブラハムの右腕なのではないか、と 「死んだ女契約者のポジション。そこに、ゲルトラウデがすっぽり収まっているとしたら。その可能性が高いと思わないか?」 問題は 取り憑かれて乗っ取られたか それとも、多重契約で飲まれて乗っ取られたか どちらであるかによって、ゲルトラウデ・オラーリャと言う女を救い出せる可能性があるかないか、その答えが出る ……今は、その結論を出すには材料が足りなすぎるのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 無垢なる支配者と蜘蛛
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アンケートまとめ 避難所民その1 さんの場合 Q00. あなたは都市伝説を信じますか? 不思議な体験はしたことありますし、その方が楽しいので信じてます。 Q01. あなたはどんな都市伝説が好きですか? 怖いのが苦手なので、笑えたりほんわかしたりするのがいいです。コアラのマーチとか。 Q02. あなたがこのスレで好きな物語はなんですか? Tさん。このスレで初めて読んだ物語で、もし読んでなかったら今ここで書いてないかもしれません。 あと三面鏡の少女とか、花子さんの話とか、はないちもんめの話とか。というか全部好きです。 Q03. Q02.のどこが好きですか? 基本的に可愛い女の子と紳士という名の変態がいればそれでよかったりします。 Q04. あなたがこのスレで好きなキャラクターは誰ですか? とりあえずTさんの契約者とリカちゃんとバイトちゃんと三面鏡の少女には結婚を申し込みたいd(ry あとは人体模型と赤い靴、上田さんあたりでしょうか。友達になりたい。いっしょにコサックダンス踊ったりいろいろ語り合いたいです。 Q05. Q04.のどこが好きですか? このスレにいらっしゃるみなさまならば理由はわかっていただけるかと。可愛い&趣味が合います。 いちおう弁解させてもらうと俺は紳士です。ただ幼女を兄的な視点で愛でたいだけで、他意はないだす。いえ、です。 Q06. あなたの契約したい都市伝説はなんですか? 可愛い女の子、ロリだとなおよし。変態じゃありません、ただ妹的に愛でつつ夜一緒に寝たいだけです。 Q07. あなたのフェティズムを教えてください。 特にはありません。強いて言うなら肩と腰、そしてほっぺ。ほっぺ柔らかそうだと一気にグラッときます。あとS。 Q08. あなたの好きな曲を教えてください(ジャンルは自由です)。 東方関連や犬神サーカス団、徳永さんあたり。後は偶然聞いて気に入ったのをつらつらと。 Q09. 御感想、御意見など、御自由にどうぞ!! 皆様の文才がウラヤマー! もっと精進せねば………。 あと、全世界の人類がみな変態になりますように。そんな世界がこっちの理想ですが来る予定はありますか? Q10. さっきからあなたの後ろにいる方はどなたですか? ああ、きっとアレです、一昨々年に亡くなった親戚のじっちゃんが見守ってくれてるんですよ。 え、違う? HAHAHA、そんな馬鹿なことあるはずががががががっがggggggggggggg Q11. あなたは赤/好きですか? 赤というより血が好きです。あの鉄っぽい味、美味しいですよね。 正直、血が流れると興奮してきます。時間経つと色変わるのが残念。
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【電磁人の韻律詩22~世紀末中華料理店『北斗神軒』~】 カラコンコロン 笛吹探偵事務所のドアが開いてベルが鳴る。 「ココが笛吹探偵事務所アルカ?予約していた魁ダヨー!」 「あれ、お嬢ちゃん迷子?ここは探偵事務所でお菓子屋さんじゃないよ?」 恋路がその珍客に出会って最初にかけた言葉はそれだった。 「失礼な小娘ネ、コレデモ立派な成年女子ヨ。」 「え?」 「私が依頼の予約をしていた魁アル、笛吹は何処に行ったカ?」 「あ、魁さーん!もう来たんですか?予約より一時間早いですよ? 笛吹さんなら今はNYに出張してます。」 「そうだったカ?そりゃあ済まなかったネ。うっかり忘れてたヨ」 「い、依頼者の方?」 「そうアル、さっきからそう言ってるネ。」 事務所の奥から向坂が出てきて彼女に応対する。 どうやら彼女は笛吹探偵事務所に来た依頼人らしい。 しかし恋路はそれを信じられなかった。 何故なら、目の前に居る「セイネンジョシ」はどう見てもバスなどの公共交通機関を半額で乗れそうな外見だったからである。 「ほんっっとうに申し訳ございませんでしたあ!」 「良いアル、この程度気にしていたら今まで生きてこられないヨ。」 「あのね、恋路ちゃん。この人は学校町の名物中華料理店『北斗神軒』の店長で、 近くの道場で子供たちに太極拳を教えている魁喬さんって言うんだよ。 この人の酢豚がすっごく美味しいの!」 「ちなみにNYに弟子が二号店出したね、今度NY言ったラヨロシクタノムヨ。」 「あの、ちなみにおいくつなんでしょうか……。」 「ふっ、女性は秘密を纏って美しくなるネ。」 恋路はますます目の前の女性のことが解らなくなっていた。 戸惑っている様子の恋路を見て向坂が話を切り替える。 「ところで今回の依頼ですが……。」 「オット、話してなかったネ。最近私の店の周りに都市伝説が出て困ってるヨ。 退治して欲しいネ。」 「成る程……、どのような都市伝説でしょうか?」 「エットー、夕方歩いてたら追いかけられたラシイネ! 口が裂けてたらしいヨ。 それと女性しか狙わないらしいアル! 卑劣ネ!女性の敵アル!」 「それは魁さんが直接会った訳じゃないんですか?」 「私が太極拳教えている子供が追いかけられたらしいアル! 許せないヨ!」 「成る程、……解りました。」 向坂は魁の話を紙にメモするとすばやく笛吹に電話する。 「笛吹さん、魁さんがいらっしゃいました。 はい、都市伝説関係です。 はい、はい、……明日君は別件で今出てます。 ………え?」 「どうしたアルカ? 笛吹が居るなら替わって欲しいアル。」 魁は小さな手を電話に伸ばす。 向坂はとりあえず魁に受話器を渡す。 「笛吹君?ニューヨークに居るノカ?」 「はい、そうなんですよ。貴方のお弟子さんの店にも行きましたよ。」 「キイタネ、君には少し辛みタリナカタカ?」 「いえいえとんでもない、素晴らしい味でしたよ。」 「そうやって甘いこと言っているとあの馬鹿弟子つけあがるネ。 もっとガツーンいったげなきゃダメヨ!」 「はぁ、すいません……。 ところで依頼の件なんですけど、そこに居る恋路に任せても良いですかね? 話を聞いた所、都市伝説退治をすればそれで大丈夫みたいですし。」 「ワカッタネ、君が言うんだタラこの子に任せルヨ。」 「じゃあよろしくお願いします。」 プツッ 電話は切れた。 魁はニコニコと微笑みながら恋路の方を見る。 「聞いてたカ?恋路チャン。あんたに何とかして貰うことにナッタヨ。 ヨロシク頼むね。」 魁はそう言って恋路と握手した。 「さてさて、ここかなぁ?」 恋路は地図を確認しながら辺りを見回す。 しかし場所はあまり解っていない。 地図を読むのが苦手なのだ。 依頼人の話から考えると出没する都市伝説は恐らく口裂け女だろう。 「しかし、女の子しか狙わないって……どうよ?」 相手がもし口裂け女だとするならばだ。 自分が綺麗かどうかを女の子にしか聞かないなんておかしな話だ。 自分が綺麗かどうかなんてそれこそ異性に聞けば良いではないか。 恋路は違和感に囚われていた。 「ねーねーおねーちゃん、わたし綺麗?」 「――――――!」 恋路は驚いて後ろに飛び退く。 彼女の背後に立っていたのは唇を塗りたくった女の子だった。 「口裂け女!?」 恋路はその子供を警戒する。 もしかしたら子供の姿の口裂け女だって居るかもしれない。 そう思っていたのだ。 「ふ、ふ、ふぇえええええええん!」 恋路が大声を出したせいで驚いてしまったのだろう。 女の子は泣き始めてしまった。 「……あれ、口裂け女じゃない?」 「えええええええええん!」 どうやら自分はこの少女を泣かせてしまった。 なんとか宥めようと思って恋路は少女の近くまで寄る。 すると、脅えた目をした少女は走りってそのままどこかに行ってしまった。 「あちゃあ、……悪いことしちゃったか。」 恋路はバツが悪そうに頭を抑える。 子供を泣かせてしまうというのはあまり気持ちの良い物では無い。 「あの、すいません。」 「なんですか?」 そう思っていると彼女は後ろから声をかけられた。 「ゴホッゴホ!さっきこの辺りに女の子は居ませんでしたか? 口紅を塗りたくっていたと思うんですが……。 ああ、彼女は僕の妹なんですよ。まだやんちゃ盛りで……。」 彼女に声をかけたのはマスクをした青年だった。 どうやら風邪を引いているらしい。 恋路はその青年に少女が向かった方向を教えると近所の公園で少し休むことにした。 「どうしたネ、恋路ちゃん。 なんかちょっと落ち込んでるミタイネ。 調査も一日や二日でそう簡単に見つかる訳じゃないしそんなに落ち込むナヨ。」 「あ、魁さん。」 公園で休んでいると急に魁が現れた。 魁は暖かい缶コーヒーを恋路に投げて寄越す。 「魁さん、私、都市伝説と戦うのはまだしもこういう探偵の仕事って上手くできないんですよ……。 その上、さっきは普通の女の子を口裂け女と間違えちゃったり……。 向いてないのは解ってたんですけど……、凹むっていうか。」 「私ダテ若い頃上手く行かないことアッタネ。 でもその度に必死で努力したヨ。 駄目でも駄目駄目でも駄目駄目駄目でもとりあえず目の前の壁に身体ごと突っ込んでミルネ。 意外とその壁も罅入ってたりするヨ。 マァ、コーヒー飲め。」 「ありがとうございます……。」 恋路の飲んだコーヒーは苦かった。 缶を見てみるとブラックだ。 「魁さん……。」 「糖分と脂肪は乙女の敵ヨ。」 「はい……。」 しかし糖分大好き娘である恋路は苦い物が苦手だ。 ますます凹んだ気持ちになる恋路であった。 「それじゃあ私ももうイクヨ、店の仕込みアルね。」 「はい、私ももうちょっとこの辺りを探し回ってみます。 日没まであと少し有るんで。」 そう言ってそれぞれベンチから立ち上がろうとした時だった。 「キャアアアア!」 どこからか子供の悲鳴が聞こえる。 「あれは……。ってアレ?恋路ちゃん!」 「ちょっと様子見てきます!」 魁が声を出す前に恋路は走り出していた。 先程聞こえた声に彼女は聞き覚えがあった。 そしてそれが正しかったとすれば、彼女はとんでもないことをしてしまったかもしれないのである。 「何をやっているの!」 「おや?」 彼女の予想は正しかった。 悲鳴を上げていたのは先程会った口紅の少女。 そして、 「何をやっているの、聞いているの!」 口紅の少女に襲いかかる都市伝説は…… 「口裂け女、いいえ。 ――――――――――――口裂け男!」 「おやおや、ばれちゃったか。」 男は口元も裂けんばかりに――いや実際裂けているのだが―――笑う。 その姿は間違いなく都市伝説。 この街に巣くう怪異。 「残念だなぁ、今日はこの可愛い女の子に僕が綺麗かどうか聞こうと思ってたんだがね。 ほら、子供の感性ってピュアで美しいだろう? だから子供に聞いて美しいと言われれば僕は自分が美しいと自信を持てたんだが……。 邪魔が入ってしまった。」 「そんな下らないことはどうでも良い!早くその子を放してやれ!」 「嫌だね、これから彼女には僕が綺麗かどうか判定して貰わねばならない。」 恋路は少女を救おうとすばやく走り寄る。 しかし、口裂け男はそれに気付いて鋏を少女に向けた。 「おぉっと!下手に近づいてみろ、子供がどうなっても知らんぞ?」 「子供を人質に取る気か!」 「当たり前だ何が悪い!」 「ゲス野郎め……………。」 恋路は憎しみ一杯に口裂け男をにらみつける。 彼女の拳では遠くの相手を倒すことが出来ない。 彼女が人間だった頃に修めていた拳法はあくまで護身術であって、 相手の攻撃が自分に向いた時にそれは始めて意味をなす類の物なのだ。 「僕は足が速いからなあ、このままこいつを人質にして一旦逃げさせて貰うぜ? お前が何者だろうと僕の速さに敵うわけがない。 それじゃあな!」 そう言って口裂け男はクルリと後ろを向いて逃げ出す。 恋路は、自分が黙っていたからと言って人質が安全とは限らないことも理解はしていた。 しかし動けなかった。 人間であった頃の彼女ならばもしかしたら子供ごと都市伝説で攻撃したのかもしれない。 だが今の彼女にそれはできなかった。 「オイ、待てヨ。」 「なんだガキィ!」 「その子置いてイクネ、そしてこの辺りにもう二度と出没しないと誓うなら許してやルヨ。」 「な、何言ってんだぁ?」 いつの間にか、口裂け男の後ろに子供が一人立っていた。 いや子供ではない。 魁喬だ。 「……何時から、其処に?」 恋路はポツリと呟いていた。 恋路は一応、人間であった頃は武術を嗜んでいた。 だからなのか人の気配とかそう言う物にはとてつもなく敏感である。 しかし、彼女は魁喬がそこにいたことに今まで気付かなかったのだ。 「五月蠅い男アル、言うこと聞かないならこうダヨ!」 「え………」 「――――――――――――裡門頂肘!」 低い体勢から、全身の体重を肘一カ所に集めて口裂け男の顎を打ち上げる。 その勢いを利用して彼女は飛び上がると口裂け男の肋骨の隙間に靴の先端で蹴りを打ち込む。 遠くへ吹き飛ばす蹴り方ではない。 靴の先端を肋骨の隙間に引っかけて男を地面に叩き落とすような蹴り方だ。 「脳と肺を少しばかり弄らせて貰ったアル、ろくすっぽ立てない筈ヨ。」 「ガハッ……!なんだこれ……ゴホッゴホッ!」 「ほら、そこの少女、あのお姉ちゃんの所に行って守って貰うネ。」 少女は頷くと恋路の下に駆け寄った。 恋路は少女を抱きかかえると口裂け男と魁喬から距離を取る。 「ちくしょう、なんだこの化け物!」 そう言って口裂け男は恋路の方へ逃げてきた。 さすが口裂け女の系列の都市伝説だけあって動きは速い。 「そこをどけ!」 鋏を振り回して道を空けるように脅すが恋路はそれに応じるつもりはない。 恋路は少女を自分の後ろに立たせる。 彼女は腰を軽く落として左半身だけ前にむけた基本的な構えをとった。 口裂け男が鋏を振り下ろす隙を狙って彼の腕をつかみ取り、そのまま腰を一気に落として背後に回る。 まず最初に手首をひねり、次に片手で固定して肘を破壊、足払いをかけて体勢を崩した所で一気に肩を外した。 「ギャアアアアアアアアアア!!!」 口裂け男が叫ぶ。 いくら都市伝説と言っても間接を壊されると痛いのだろう。 腕を押さえて悶絶している。 「おー、なかなか上手ネ。何かヤテイルと思ってたがヨーロッパの方の技か。」 魁喬が前から近づいてきて感心したように言う。 「あ、どうも子供には目の毒だとは思ったんですけれど仕方なくて……。」 「良いよ良いよ、キニスルコトナイネ。お嬢チャン、もうこんな時間アル。 早くお父さんお母さん所に帰るアルよ。」 「は、はーい……。」 魁喬にそう言われると少女は帰ってしまった。 恋路は組織に電話を入れて口裂け男を回収してもらうと魁喬と一緒に事務所の辺りまで帰ることにした。 「あの……依頼達成できていないので報酬は……。」 「報酬は別に良いヨ、君が居たから見つかったネ。それより……ワタシの道場来る気ないアルカ? 基礎は出来ているみたいだからすぐに八極拳覚えられるヨ。」 「へ?」 「考えておいて欲しいアル、悩み事とか有ったら訓練するのが一番ヨ!」 「はぁ……。」 「それじゃあもうそろそろ店に着くんでサヨナラアル。じゃーな。」 「解りました、考えておきます。あ、……さようなら。」 恋路は自分の手をジッと見て考え込む。 「単に守るだけじゃ誰かを助けられないよなぁ」 自分ももっと強くならなくてはいけない。 恋路はとりあえず急いで家まで帰ることにした。 【電磁人の韻律詩22~世紀末中華料理店『北斗神軒』~fin】 前ページ次ページ連載 - 電子レンジで猫をチン!
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赤い目をした女の子 05 日傘にサングラス、二つともうさぎが日中を歩く上での必須アイテムだ。 色素が極端に薄いうさぎは日光に弱い。 日に焼けるとすぐに真っ赤になってしまうのだ。 おそらく、UVクリームもかかさずに塗っているだろう。 それはさておき、俺は今最高にハッピーなのだ。 なんたってうさぎちゃんとの初デートなのだから。 何故こんなハッピーなことになったかというと、一日前に遡る必要がある。 その日、うさぎちゃんの家の家具一式は、ほぼあますことなく引き裂かれた。 真っ二つになった冷蔵庫。ちょうど真ん中をM字型になったベッド。 薄型でもないのに、薄くなったテレビなど、 まぁ、とにかく使えるものが無くなったのだ。 原因はというと、組織とやらが派遣してきた二人組のせいなのだが…… 組織には苦情の電話をかけた。 もちろん、節度のある苦情をだ。 「弁償しないと、族時代のころのダチ集めて総力で潰す」 といった感じの。 で、今日うさぎちゃんの通帳を見てびっくり。 桁を間違えたのではないかという金額が入っていたのだ。 その通帳を持ってきたときのうさぎちゃんは、なんだかオドオドとしていた。 「こ…こんな額もらっちゃっていいんでしょうか…」 とか言って、とにかく可愛かった。 で、家具一式を買い替えにきたというわけだ。 つまり、デートと言っても過言ではないということになる。 「どんな家具買うの?」 予算は有り余るほどにある。 高級家具一式だって買い揃えれるほどだろう。 「えっと、いい歳しておかしいかもしれませんが……可愛いのがいいです」 なんだか最近は、うさぎちゃんの一言ひとことが可愛いと思えてくる。 「全然おかしくないよ。うさぎちゃん可愛いし」 俺がそう言うと、うさぎちゃんは真っ赤になってしまった。 休日だというだけあって、カップルを頻繁に見かける。 ん?あれは小学生のカップルか?手なんか繋いで生意気な。 生意気なので、二人をじっくりと観察してみた。 彼女のほうは、彼氏より大人びた感じだな。 だが、高飛車そうなとこはマイナス点だ。 きっと、あの彼氏、尻にしかれてるに違いない。 彼女にするなら、やっぱり、うさぎちゃんのように、優しく可憐で何より可愛らしい感じの…… 観察をやめ、うさぎちゃんを見ると、 何故か道の隅でうずくまっていた。 ん………あ、そうか、もしかしたら、都市伝説が近くにいるのかも。 うさぎちゃんは、あらゆるものを見る瞳を持ち、危険なものを感じることができる。 そしてうさぎちゃんは極度の怖がりだ。 よって、うさぎちゃんの怖がりかたによって、どれくらい近くに都市伝説がいるのか、だいたいわかるのである。 ここまで怖がっているということは……既に目前にいるのかもしれない。 慌てて辺りを見回す。 いるのは、さっきの小学生カップルくらいだ。 どういうことだ?都市伝説なんて見当たらないぞ? 考える…考える…………… あっ! なんだ、そういうことか、なんでそんなことに気づかなかったんだ! うさぎちゃんは、ただお腹が痛いだけなんだ。 「大丈夫、うさぎちゃん。お腹痛いんでしょ?」 「ち…ち……」 震えている。一見怯えているようにも見えるが、腹痛からくる震えだろう。 「そんなにお腹痛いの?」 「ち…違っ……」 血?血がっ? 「お腹が痛い」「血」二つのキーワードが導き出す答え…… 俺は全てを理解した。 「うさぎちゃん、もう何も言わなくていいよ。わかってるから」 女の子にそれ以上は言わせるわけにはいかない。紳士として。 俺はうさぎちゃんを優しく抱き抱え、来た道を戻る。 この様子からすると、うさぎちゃんのはよほど重いのだろう。 「その…ですから…違うんです…都市伝説が……」 うさぎちゃんが何か言っている。しかし、あえて聞かない。 俺は無言で帰路を急ぐだけだ。 うさぎちゃんに恥をかかせないために。 結局、この日は家具を買うことができなかった。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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「さらに俺は巨大化を発動!これで青眼の究極龍の攻撃力は9000!電動刃虫を攻撃!」 「ちょ、それはひで…ぐあああぁぁぁ!」 「…ちょっと散歩に行ってくるでの」「流石にそれはひで…あ、あぁ了解」 「ふぅん。絶対的な力を持って制すのが俺の決闘だ!」「ほぅ…ならばコイツを解放する時が来たようだ…」ゴゴゴゴゴ… 数十分後…… 「イレカエルの効果で貫ガエルを特殊召喚!デッキから特殊召喚されたことでスパルタクァの呪術師の効果!相手に500ダメージ!」 「ふぅん。そんな小さなダメージ、痛くもかゆくもないわ」「そいつはどうかね?さらにイレカエルの効果!貫ガエルをリリースし、未知ガエル!さらにリリース!裏ガエr(ry」 「き、貴様ぁぁぁぁぁぁ!1ターンで全てのライフを削り取るなど…!」「…お前が力で決闘を制すというなら俺は頭で決闘を制す!」 「許さん…許さんぞ!もう一度決闘d「ピンポーン」…客か」 「お初にお目にかかるの、ハンさんの契約者さんや」 玄関を開けると、地面につくほど髪を伸ばし、大量のビニル袋のかかったベビーカーを引く婆さんがいた。 「…ハンさん?」「『ハン』バーグの爺『さん』じゃからハンさんじゃよ。老人都市伝説会の基本じゃぞ?」 はぁ、ととりあえず返事をしておく。爺さんの知り合いっぽいしどうやら悪い人じゃなさそうだな… 「紹介が遅れたのぅ。私は『ロン毛ババア』という都市伝説じゃ。まぁロンさんとでも呼んでくれ」 「は、はぁ…あ、そういや…爺さんならあいにく散歩に出たまま戻ってないんだ」「…いや、その爺さんなんじゃが」 なんだか婆さんは言いにくそう、もとい笑いをこらえているようにみえる。 「実は…ハンさんがさっき道端でまっどなんたらにやられてのぉ…」「…え?マッドガッサーに?マジで!?」 マッドガッサーといえば、最近嫌でも耳にする野郎だ。 なんでも、今回の奴は男を女に変え、女をエロくするガスで学校町をハーレムにしようとか何とか。 コノヤロ、最こゲフンゲフン最悪の野郎じゃねぇか! 「…ということは、爺さんが婆さんになったってこと?」「それのほうがよかったじゃろうがなぁ…ククク…」 こらえていた笑いが漏れた。…婆さんになる以外に一体何が起こると…? 「ほれ、ハンさんや。契約者さんが心配しとるぞ。ちゃんと自分の体を見せてやらねば」 …あ、塀の裏から誰か出てきた。爺さん、一体どんな姿に… 「…なんじゃ、あまり見るでないわ」 なん…だと? …口調は明らかに爺さんなのだが、その姿がどうにも前からは想像しにくい… …幼女になってる… 「…まさか、ガスが年齢まで変える代物だとは思わんかったわい」「全くじゃのぉ…ククク」 「どうした?早く決闘の続きを……ジ、ジジイ!?ジジイなのか!?貴様、何故そのような状況に!?」 あーもー、社長出てくんなよ面倒くさいことになりそうだからさ… ……… 「なるほど…マッドガッサーの仕業、ということだな」「あぁ、そういうことじゃ」 「一応私の解毒剤も試したんだけどねぇ。どうも都市伝説相手には効かないようでねぇ…」 あ、解毒剤あるのな…何人か解毒剤なくてめちゃくちゃ困ってるって聞いたんだが… 「しかし問題は体ではない。能力まで弱体化させられてしもうた」 そう言って爺さんがハンバーグを作り出そうとすると… ……ミートボール出てきた… 「…とまぁ、こういう感じじゃ」「まぁ…その…ご愁傷様です」 「とりあえず都市伝説なら一週間もたてば効力は無くなるらしいからのぉ。しばらくはその格好で過ごすしかないのぉ…ククク」「お主まだ笑うか!」 ミートボールをぺち、ぺちとロンさんにあてる幼女爺さん…こういうのはロリジジイでいいんだろうか…? 「おのれ、まっどがっさぁの奴め!今度会った時はがすますくの下にハンバーグ入れ込んでやるから覚悟しておくがいいわぁ!」 家の前で高らかに叫ぶロリジジイであった。 前ページ次ページ連載 - わが町のハンバーグ
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【電磁人の韻律詩17~笛吹探偵事務所の日常~】 麻薬みたいな男を一人知っている。 その男は人を酔わせる不思議な魅力を持っている。 その男は万人が求める悪人としての要素を十分すぎるくらいに持っていた。 他人など意に介さず自らの意志の赴くままにあらゆる悪行を為し、 自分の目的の為には他人を道具としてしか考えない。 人を酔わせる麻薬そのものか、麻薬に操られる人間か。 この差は大きい。 同じ悪を為す人間であっても前者は自らの意志で悪事を行い、後者は状況に流されて悪事を行うからだ。 どちらが悪いという話でもないが……。 正義の味方をやっていると善にはなり得ない人間が居るってことを実感せざるを得ない。 自らの意志で悪事を行う人間はそういう意味で恐ろしい。 彼らは自分が悪だなんて欠片も思わずに自らの思うままに行動するのだ。 自分を大事にとか心のままになんて言葉は良く聞くが、程々にして欲しい物だ。 「悪魔の囁きの契約者とその仲間。 今の学校町を騒がせているのはそいつらだ。 お前が言うところの悪人ってならそいつらじゃねえかな? 組織から任務が降りてくるだろうからくれぐれもお前一人で突っ走るなよ?」 「はい、ありがとうございます。」 「それとお前さんが会ったポケモンマスターだったっけか? お前とは相性が悪すぎるから戦うのはやめておけ。 超遠距離から契約者を一撃で倒すタイプの都市伝説で対処することになると思う。 お前らには恐らく蛸妊娠だかの契約者の対処が割り当てられるんじゃないか? 対生物が一番刺さるだろう?お前らの攻撃って。」 「そうですか……。 解りました、でも俺達の接触した契約者って………。」 「ああ、知っている。子供なんだろう? 組織だってそこまで酷い奴らばかりじゃねえよ。 というか今は善良な奴が多いぜ?何故か“事故死”する過激派の黒服が多いそうだ。」 「そうですか……。」 「そうなんだよ。それじゃあ切るぜ。」 「はい、それじゃあ。」 携帯電話の電源を切ると俺はそれをポケットに投げ込んだ。 身体をバタンとソファーに投げ出す。 俺は笛吹探偵事務所の所長室の椅子に腰をかけていた。 学校は終わって、今は春休みである。 「どうしたのアスマー?」 「いや、Hさんからの電話。」 「おーい、恋路!もう一回勝負しろ!」 奥の部屋、恐らくここの主がプライベートで使っている部屋から子供の声が聞こえる。 「あ、ちょっと待っててねレモンちゃん!」 「橙だ!」 「似たような物じゃないか!」 ハーメルンの笛吹きからこの事務所を預かり受けた時、助手を一人紹介された。 橙レイモンという少女だそうだ。 複雑な経緯で彼の事務所の助手をしているらしいが詳しいことはまだ教えられていない。 ただ、このレイモンという少女はハーメルンの笛吹きの語るときに嬉しそうな顔をする。 だからハーメルンの笛吹きに何か恩義が有るのだろう。 「小足みてから昇竜拳!」 「うわああああああああああ!!!」 恋路と橙は格闘ゲームをやっていた。 そしてまた橙が負けた。 恋路の超速反応について行っている分、今までの挑戦者よりはまともに戦えているのだがそれでも彼女には勝てないようだ。 「なあ、橙……さん。」 「なんだ明日真。」 「その、君の都市伝説ってのは本当に……?」 「しつこい奴だな、僕の都市伝説はラプラスの悪魔だと言っているだろう。」 「アスマー、女の子に詮索かけるのはあんまり良くないよー!」 「むぅ……。」 橙レイモンという少女は『ラプラスの悪魔』と契約している契約者なのだそうだ。 どうも俺にはそれが信じられない。 こんな小さい少女がそれ程巨大な都市伝説と契約できそうには思えない。 その辺りの詳しい事情も聞きたいが恋路に阻まれて聞き出せない。 「壁際まで追い詰めて1killコンボ!」 「うわー!また負けた!」 「レモンちゃん大分強くなってきたねえ!」 まあ解らなくても良いかと思う。 橙は優秀な助手だったしこれ以上探るのも野暮という物である。 というか探偵そのものだった。 おそらく笛吹は彼女に探偵業務の大半を行わせていたに違いない。 「明日君、頼まれていた都市伝説の出没マップ持ってきたよ。 元気無さげじゃない?」 ドアが開くとセーラー服の少女が事務所に入ってきた。 向坂境、この探偵事務所の所長だ。 笛吹がまとめた都市伝説の資料を向坂が持ってきてくれたのだ。 「ああ、向坂さん。いやどうにも笛吹という男が解らないんだよね。」 「そう?あの人って良い人よ。私のお姉ちゃん見つけてくれたし。」 「そりゃあ仕事だったからだろう。」 「わたしお金払ってないよ?」 「ああ、そういやそうだったな。良い人って……どんな風に?」 よく考えれば俺は笛吹という人間をよく知らない。 これから戦うことになるにしてもこのまま協力関係が続くにしてもあいつのことを知っておくべきだろう。 「彼は、神様みたいに良い人でした。」 歌うように語り始める向坂。 そうとうあの男が好きなのだろう。 そういえば笛吹は女性に好かれやすいな、この事務所のスタッフも彼が契約している都市伝説も女性だ。 あんな性格なのに何故だろう? 理不尽だ。 「まあ神様というのは冗談として彼って基本的にずれた人です。 だからなのか知らないんですけどついつい見ていたくなります。 彼は彼しか愛せない人間ですが、そんな彼だからこそ不思議な魅力を持っている。 むしろあれほど魅力的な自分だったならば愛せざるを得ないかもしれない。」 「変わっているけど良い奴なのか?」 おかしい、俺は会った瞬間殺されかけたはずなのだけどな? 「自分はろくでもないド外道の畜生野郎だからできるだけ人に優しくしているって言ってました。」 うん、確かにあいつはド外道だ。 「成る程ね、他になんか特徴って無いの?」 「ああ、すごく自己中だよ。」 今度は後ろから声が届く。 橙レイモンが口を挟んできた。 「あいつはとにかく自分の感性を優先する。 他人の事なんて一切考えない。 自分の都合で誰かを幸せにして誰かを不幸にする。 そこそこ優秀な人間だからなおのこと他人に迷惑かけるんだよ。 人間味が薄い、ってのが一番言い得ているかな?」 「あー、それは私も思った。 笛吹さんって人間っていうには頭の捻子外れちゃっているよね。」 今度は恋路だ。 なんでみんなあいつのことを話したがるのだろう? 「お前ら楽しそうだなおい……。」 思わず呟く。 悪人ほど人を惹き付けると言うがその通りなのだろうか? 誰かと人間関係を作るとき善悪なんて人はそれほど気にしない物なのかもしれない。 でも、悪いことは悪いこと。 どこまで言っても変わることはない。 だからそういう考え方は駄目だと思うのだが、今言っても仕方がないか。 「話題にしてると飽きないから。」 「話題にしかならないから。」 みんな、同じようにそう言った。 カランコロン! 事務所のドアが開く。 「皆さんこんにちわ………?」 遠慮がちに扉を開けて来たのは金髪の幼女だった。 「おや、メルちゃんじゃないか。」 「お久しぶりです皆さん。」 「やっと来たか笛吹(小)。」 「メルちゃん元気になったー?」 幼女、といっても都市伝説『ハーメルンの笛吹き』、しかも本体である。 本来とても危険なはずの都市伝説なのだがここに居る女性陣は普通に接していた。 普通身構えないか? 俺がおかしいだけなのかもしれない。 「明日さん、その節はどうもお世話になりました。」 ぺこりと頭を下げるハーメルンの笛吹き。 「いえいえ、こちらこそ。」 一応自分も頭を下げてみる。 どうも彼女のことは苦手だ。 「メルちゃんとりあえずスマブラやろうぜー。」 女性陣は四人揃ったのでスマブラを始めることにしたらしい。 俺は人数にカウントされていないようだ。 「私wii出してきますね。」 「――――――向坂さんそこを開けちゃ駄目だアアアアアア!!」 「え、あ、…………うわあ。」 絶叫するレイモン。 愕然とする向坂。 「所長が何か妙な物でも隠してたんですか?」 メルが後ろから覗き込もうとする。 「駄目だ、メルちゃん貴方は見ちゃ駄目!」 「あ~れ~!?」 向坂はすばやくメルの目を隠す。 「あはは、まあ所長も成人男子だしねえ……。これくらいなら許容範囲内じゃない?」 恋路がとりあえず弁護し始める。 「じゃあ恋路さん、仮に明日君がこんな物持ってたらどうしますか?」 俺の話にするな、向坂。 「そりゃ決まってるじゃないか向坂さん。」 「と、言いますと?」 「正直引くわー………。」 俺は家に帰ったらすぐに『Hで綺麗なお姉さん』のDVDを処分することに決めた。 さらば、俺の秘蔵コレクション。 「さて、気を取り直してゲームやりましょうか。」 「そだね、これは見なかったことにしよう。」 くそっ、あいつの隠してたDVDってなんだったんだ! すげえ気になるじゃないか! あいつの好みってなんなんだ? わがままな性格だから年下か? いや、もしかしたら人妻とかそういうドロドロしたのなのか? 気になる!すっげえ気になるじゃないか!!! 「あ、あのさ……。」 意を決して聞いてみることにした。 「其処にあったのって……。」 女性陣が同時に振り返る。 少々怖い。 「あ、すいませんでした。」 とてつもない疎外感を感じた。 「テンッ!クウ……ウボァー!」 「ふっ……そこだぁ!」 女性四名はスマブラをしている。 先程までは恋路が圧倒的に強かったようだが今度は橙が強いらしい。 「橙さん、弱った相手だけ狙いますよね。」 それに真っ先に気付いたのはメルだった。 ピクミンを投げながら向坂を牽制している。 「これはそういうゲームだよ。」 「それにしてもまさか私達の動きを能力で読んでいるなんてことは……。」 まさかこのゲームでも橙は都市伝説の能力を使っているのか? 「だからどうしたんだと言うんだ!ハッハー!勝てば良いんだよ勝てば!」 もはやキャラが違う。 スマブラが友情破壊ゲームだとは聞いていたがここまでとは知らなかった……。 「その通りだ、レモンちゃん。」 「えっ、嘘!?」 一瞬で橙のマルスまでの距離を詰める恋路のウルフ。 「こいつで遊んでやるぜ!」 「あーれー!?」 橙のマルスはなすすべもなく吹き飛ばされていった。 はて、ここは探偵事務所だったような気がするのだが……? これだけ遊んでいても良いのだろうか? 一しきり遊ぶと恋路は夕飯の為に買い出しに行ってしまった、 橙は親御さんらしき謎の紳士のお迎えで帰り、 向坂は親と約束した時間なので自宅に帰って行った。 そして俺とハーメルンの笛吹きのみが事務所に残されてしまった。 「明日さん、私が暴走している時に所長の手助けをして頂いたって話を聞きました。 本当にありがとうございます」 急に真面目な顔になって俺に頭を下げるメル。 どうにもこうやってまともに感謝されるのは苦手だ。 別に当たり前のことを当たり前にやっているだけな訳だから。 「いや、誰かを助けるのに理由なんて要らないよ。」 「……本当に良い人なんですね。理由が有ればなんでもするあの人とは正反対だ。」 「理由が有れば?」 「ええ、あの人は都市伝説として消えかけていた私を明確に人々に記憶させる為にあんなことしてたんです。 そこに彼自身の趣味趣向はあったのでしょうけど……。 そういう大義名分は少なくともありました。」 「この前の孤児院襲撃もそうなのか? 男の子一人に説教決める為だけに大暴れしたそうじゃないか。」 「ああ、あれも組織の過激派に連れて行かれそうだった女の子救い出す為にですね。 あの人は悪魔ですから、自分と自分の周りの物の為ならなんでもやります。」 「悪魔ねえ……。誰かを守る悪魔?」 「誰かを守るから悪魔なんですよ。」 「まったくだな。」 メルの言葉は不思議と胸に納まった。 「誰かを守るから、誰かを傷つけなきゃならない。」 「私は他人を犠牲にしてでも生き残ろうと思った。 でも私は手を染めたくない。 そんな時、彼が私の代わりになんでもやってやると言ってくれた。 ほんと、そんなもんですよ彼なんて。」 「悪だなあ、退治するべきだったか?」 「もう遅いですよ。 私は恐怖の都市伝説として生きていけるんで向こう1000年いけますね。 もうしばらく私が戦うことはないです。 だから私を殺しても無駄です。」 「そっか、じゃあやめる。」 わるいことをもうしないなら良いんだ。 「ていうかあれです。 もう私は只の人間とそんなに変わらないんですよ。 都市伝説の能力がほとんど無くなっちゃったんで。」 突然、メルから思わぬ言葉が飛び出た。 信じられなくてもう一度聞き返す。 「今、なんていった?」 「いや、だから所長にとりこまれちゃったんですよ。 私はまあ……ハーメルンの抜け殻的なあれです。」 「都市伝説を取り込むって……。」 「だから、私はもう何も出来ない無害な存在ですよ。」 そういってメルは力なく笑った。 「その話を聞いて気になったんだけどさ。 じゃあ今、お前の契約者はどうなっているんだ?」 「特に変わった様子はないみたいですけどねえ?」 「……少し気になるな。」 「まあ学校町もすっかり平和になりそうですからあの人は大人しくなりますよ。 いつも平和になったら真っ先に消されるのは自分だってぼやいてますし。 それを避ける為にも静かになるんじゃないですか、多分。」 「悪人も苦労しているわけだ。」 「ていうか悪いことするのってすごい労力が必要ですから。」 「苦労してわざわざ悪いことするのか? やめて欲しいなそれは。」 苦笑せざるを得ない。 「善悪なんて誰かが後から決めるものですよ。」 「いいや、善悪は自分が決めるのさ。」 「決められるほど立派な人間なんですか?」 自分は立派な人間じゃない。 それ位は解っている。 「いいや、でも悪いことは悪いって誰もが解るだろう? 常識的に考えて。」 「常識………、ですか。」 「良心でも良い。」 常識とか良心が無かったらお終いだろう? そうとしか自分には言えない。 「善悪って理屈じゃないと思うんだよ俺。 最後は何も言わずに解るような常識とか良識にかかってると思うんだよね。 そうじゃないと同じ人間で居る意味が無い。 理屈抜きにして伝わる物が一番大事だよ。」 「…………ふっつーに善人ですねあんた。」 「ありがとう、偶に言われる。」 良い人だね、この言葉が正義の味方の証明だ。 この言葉があれば自分はいつだって正しくいられると思うのだ。 それが皮肉でもあてこすりでも構わない。 だって駄目だろ、常識的に。 何時だってそう言えるのが理想ではあるがそうも言えないのが中々悲しい。 「どうしたんですか明日さん、難しそうな顔をして?」 「そうか?」 契約者もそうだがこいつも結構するどいなあ。 やはり苦手だ。 「只今ー!夕ご飯の材料買ってきたよ、メルちゃんも食べていくかい?」 しばらくすると恋路が両手にスーパーの袋を抱えて帰って来た。 「お、恋路おかえりー。」 「ああ、じゃあ私も食べていきます。」 「今日の晩ご飯はウナギです。」 「うわっ、贅沢!?」 「あれ、ああそういうことなら邪魔者は退散しますね。」 いそいそと帰り支度を始めるメル。 「いや待って!?そういうんじゃないから!」 慌ててメルを止める恋路。 個人的には彼女が帰ってくれた方が俺は嬉しかった。 「じゃあ私キッチン借りるからー!」 「じゃあ私はお皿とか準備しときますね。」 いそいそと二人が夕食の準備を始める。 俺も事務所の表札をopenからclosedにしてくることにしよう。 ウナギの焼ける良い香りを楽しみながら俺は所長の椅子から立ち上がったのである。 【電磁人の韻律詩17~笛吹探偵事務所の日常~fin】 前ページ次ページ連載 - 電子レンジで猫をチン!
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都市伝説との戦いは、体が資本である 体を這って、時には命をかけて戦わなければならない …だから 今の俺の状態は、多分、その勲章と言うやつなんである 多分 「…38度3分…」 「風邪ね、完璧に」 うるせぇ 言い返そうとして、だが、代わりに咳きが出てきた あぁ、畜生 かんっぺきに、風邪である 原因は、わかりきっている 昨日、土砂降りの雨の中、傘をさしていなかったせいだ 「無理するからよ」 「うっせ…だからって、放置しておくわけにもいかないだろうが」 黄色い雨ガッパとの、戦い 土砂降りの雨の日にしか現れない、黄色い雨ガッパ チャンスだったのだ だから、傘がないからと言って、黙っている訳にはいかなかったのだ 「兄貴ん学校に、もう一人、都市伝説と契約してる人いるんでしょ?先生だったっけ。その人に任せる訳にはいかなかったの?」 「…あの先生が契約してるのは、人体模型と白骨標本だぞ。んなもん連れて、学校の外に出れると思うか?」 俺の言葉に、妹は黙り込む はっきり言って、無理だろう あんな不気味なもん(特に、人体模型の方)を連れて外に出るとか、まず無理だ ある程度は服で誤魔化せるかもしれないが、それでもきつい だから、花子さんを連れた俺がやるしかなかったのだ なんとか、委員長を助けられたのだし…まぁ、いいとしよう 「一日二日、食って寝てれば治るだろうし、問題ねぇよ」 「そう?…でも、父さんと母さん、仕事でしばらく家にいないんだよ?」 「全く動けない訳じゃないし、昼飯くらい作れる」 いいから、お前は早く学校行け 昼飯は、仕方ないから学食で済ませておけ うー、と妹はぐずっていたが、手鏡から声をかけてきた鏡婆にも説得され、学校に向かって行った うん、それでいい 俺は風邪を気合で治すから、お前は看病なんてしなくていい けほ、と小さく咳をしつつ、ぼんやりと天井を見上げる 「…けーやくしゃー?」 ひょこり 部屋の中に、花子さんが顔を出してきた てちてち、近づいてくる 「…花子さん。悪ぃ、今日は俺、学校休むな」 「風邪ひーちゃったの?大丈夫?」 ぺとし 額に、花子さんの小さな手が触れてくる ひやり、冷たくて心地いい 「凄く熱いよ?目玉焼きやけそう」 「あー…うん、まぁ、熱あるからなぁ。移るとまずいから、離れた方がいいぞ」 「へーきだよ。都市伝説だから、風邪なんて引かないもん」 それは、そうか 花子さんは、じーっと、こちらを心配そうに見つめてきている …まいった 花子さんを、心配させたくはないのだが が、だからといって、元気な姿を見せる余裕がある訳でもない 正直、疲労も結構溜まっていたのだろう 都市伝説との戦いは、人間にとってハードワークすぎる 「…悪い、花子さん。俺、ちょっと寝てるな」 「うん、わかった。ゆっくり休んでね」 にぱ、と笑ってくる花子さん そんな花子さんに、俺はなんとか笑い返し っふ、と…意識を、深い闇へと沈めるのだった 「………」 じーっと、己の契約者を見つめていた花子さん う~ん、となにやら考え込み …ピコーン!と 頭上に、電球が浮かび上がる いい事思いついた、と言うことだ てちてちてち、花子さんは、契約者を起こしてしまわないように そ~っと、部屋を出て行ったのだった …どれくらい、眠っていたのだろうか? ぼんやりと、意識が覚醒してくる 「…花子さん?」 返事は無い 学校に帰ったのだろうか とりあえず、かすかに空腹感を覚える 食事を作らないと…と、思ったのだが 体が、動かない どうやら、思った以上に重症だったらしい さて、どうしようかと悩んでいると …がちゃり 部屋の扉が、開いた 「あ、けーやくしゃ。起きた?」 「…花子さん?」 学校に帰ったのでは、なかったのか? てちてちてち 花子さんが、何やら運んでくる もぞ、と何とか、上半身だけ起こして確認すると、それは 「…粥?」 「うん!私が作ったんだよ!」 ぴ!と胸をはる花子さん それは、どう見ても粥だ それも、レトルトで作ったものではない きちんと、作ってくれた物だろう そう言えば、花子さんは、あの不良教師が契約している白骨標本から料理を習って、少し料理ができるようになった なぜ、白骨標本が料理できるんだと言う点はとりあえず突っ込まないでおいていたが 「けーやくしゃ、早く元気になってね!」 にぱ~ まるで、天使のような笑顔 俺は、思わずそれに笑い返す 「ありがとうな、花子さん」 ぽふ、と その頭を撫でてやると 花子さんは、ますます嬉しそうに笑って 都市伝説との戦い 体を這った、時には命すらかけた、戦い こうやって、体を壊してしまう事も少なくは無いが …たまには、こう言うのもいいか、と そう、考えてしまうのだった fin 前ページ次ページ連載 - 花子さんと契約した男の話
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“滅びの枝”より ――――植物園の一件より数日後、「組織」本部の一室にて (蓮華 ・・・・・・ふぅ 頭が働かない時は温かい緑茶に限ります 何故か分かりませんが、こうしていると落ち着くので それより (蓮華 どうしたものでしょうか・・・ 現在、私は2つのことについて悩んでいます 1つは、裂邪さんに預けた「レイヴァテイン」の今後 彼の契約していた「シャドーマン」が止めているとは思いますが、 いつ彼が契約して都市伝説に飲まれてしまうか分かりません 契約の負担が軽くできればいいのですが、そんな都合のいい話がある筈も無く それと、もう1つ あの時・・・植物園で戦闘していた時 裂邪さんは影を失い、「シャドーマン」を含めた全ての都市伝説を使用できなくなった でもそれはただ単に、 傍に「シャドーマン」以外の都市伝説がいなかっただけ、とも言えます つまり、彼が何らかの方法で、例え離れていても他の都市伝説を呼び出せるようになれば 彼はもう、あの時ののような苦しい思いをしなくて済む筈 ・・・本当は、「組織」たる者、あまり一般人とは関わらない方が良いのですが、 それでも私はまだ、彼に返しきれていない気がして リュウゼツランの種の礼を、まだし足りなくて・・・ (蓮華 ・・・ダメですね、頭が破裂しそうです 少し、気晴らしにでも行くとしましょうか (蓮華 R-No.5、R-No.50はいらっしゃいますか? (レジーヌ 居る (蓮華 (2文字ですか・・・)少しだけ、彼女をお借りしても宜しいでしょうか? (レジーヌ 良し (蓮華 ありがとうございます 彼女に軽く頭を下げた後、私は部屋を出た それにしても、本を読みながら笑っていたような気がするのですが・・・気の所為でしょうか † † † † 少々自堕落なトップの所為で、このR-No.では、 我々上位メンバーが、区分けされた10の部隊をそれぞれ仕切っていますが、 その区分けされた中で、さらに10名が指揮官の補佐役として選ばれています R-No.50もその1人 『防衛班』を従える、R-No.5の補佐にして・・・抑制係 たまに暴走するR-No.5を抑えることのできる人材です そもそも、抜擢したのは私なんですけどね その彼女、R-No.50は、私が欲しかった程の能力を持っています 能力の性質上、色んな情報が入ってくるので、いつもその情報を提供してくれます ・・・性格に問題があるのですが コンコン (少女 『デビルアローは』!? (蓮華 『超音波』 (少女 『デビルイヤーは』!? (蓮華 『地獄耳』 (少女 『デビルウィングは』!? (蓮華 『空を飛び』 (少女 『デビルビームは』!? (蓮華 『熱光線』 (少女 よぉーし! 声が小さいからもう1回! バキッ!! 音を立てて、ドアは部屋の奥に飛んでゆきました 辺りに種と果肉が飛び散ってしまいますが、こういう時にスイカは便利です その奥では、私と同世代ほどの黒髪の少女がガタガタ震えて涙目で椅子に座っていました この少女がR-No.50です 正直、あの反応が好きで付き合ってるのかと聞かれれば、嘘とは言い切れません (R-No.50 な、なななな何さいきなり!? タチ悪すぎるよ蓮華さん!? (蓮華 貴方にだけは言われたくありません・・・ 単刀直入に言いますが、早速頼りたいのですよ 貴方の、「地獄みm (R-No.50 『デビルイヤー』! (蓮華 ・・・「地ごk (R-No.50 『デ・ビ・ル・イ・ヤ・ー』!!! (蓮華 ・・・・・・『デビルイヤー』という名の「地獄耳」の力を (R-No.50 ぐすん・・・結局言われた・・・ 彼女は観念して私に向き直った (R-No.50 分かった、ちゃんと話すよ ・・・って言っても、そんなに大した話はないよ? まだ『COA』の一件が過ぎて間も無いし、 「教会」がどうだとか、何とか契約書だとか、K-No.が怪しいだとか・・・ (蓮華 ・・・はぁ、やはりそうですか――――待ってください、今何と言いました? (R-No.50 へ?K-No.がどうかした? (蓮華 その前です (R-No.50 何とか契約書のこと? こっちはよく分かんないんだ なんだかブロックがかけられてるみたいでね (蓮華 ・・・契約書・・・その手がありましたか (R-No.50 それより『デビルマン』の話でもしようよ! 私は携帯電話を取り出した (蓮華 R-No.11ですね? 直ちにR-No.研究班を集結させてください できるだけ、機械に強い都市伝説と契約した人を多く動員してくれると助かります 携帯電話を閉じて、彼女を向いて頭を下げた (蓮華 ありがとうございました。私はもう戻ります (R-No.50 え、いや、今来たばっかりjお、おーい!? 何としてでも作り出してみせる 1日でも早く作り出してみせる そうでもしなければ、私の気は収まりませんから あの方に・・・顔向けできませんから ...To be Continued/新たな力へ 前ページ次ページ連載 - 赤い幼星
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恐怖のサンタ 悪魔の囁き&コークロア編 14 ※悪意が牙をむくの続き 山田治重は都市伝説の契約者である。 間接的な物も含めれば4つの都市伝説と契約した彼は、学校町の中でもそこそこ強力な部類に入るのだろう。 不死を得、空間移動能力を得、脚力を得、そして鉄をも曲げる怪力を得た男。 しかしもちろん、山田には出来ない事がいくつも存在する。 どんなに都市伝説と契約した所で、それが「万能」を意味する事はない。 穴を埋めるように網を張り巡らせたところで、必ずそこから漏れ出るように小さな穴が出現するのだ。 「…見逃して、やる、から………俺に、関わるな……」 だからこそ、山田は悩んでいた。 目の前には、一人血を吐き続ける黒服がいる。 見捨てる事は容易い。 見逃してくれると言っているのだから、今すぐにここから離れればいいだけの事だ。 助けるのは難しい。 山田にあるのは、人を殺し、また守るための力。 それは「治療」という言葉から遠く離れた存在だった。 「さっさと、消えろ……俺の気が、変わらないうちに……」 血を吐きながらも、黒服は山田を遠ざけようとする。 明確な拒絶。 山田元より、そこまで押しの強い性格ではない。 きっぱりと断られればそれ以上踏み込む事はしないし、ましてやここまで拒絶されれば、普段なら落ち込みながら去っていく所だ。 平凡に育ってきた山田は、一般的な倫理を元に行動する。 「…………いいや」 ――しかし、それは「普段」の事で、こんな緊急事態はその範疇の外だった。 何もできないかもしれない。 居ない方が良いのかもしれない。 それでも、何もせずに立ち去る程、山田の倫理は崩れていなかった。 結局の所、それは単なる自己満足でしかないのだろうが。 「見捨てられるわけないだろ、普通。いくらなんでもそこまで人間捨ててないぞ、俺は」 「……馬鹿、野郎が……」 一瞬、その髪が山田を追い払うためにぴくりと動く。 しかしそれ以上動かす気力も、体力も、黒服には残されていなかった。 こんな状況下での無理な能力の使用は、それこそ本当に黒服を死に至らしめる可能性すらある。 忌々しげに、黒服は血で染まった歯を食いしばって 「……そこの、ピルケースだ……それを俺に、渡せ……」 「ピルケース?」 発作か何かの薬だろうか、と山田は黒服の周囲を見渡した。 既に周囲は夜の闇に包まれ、電灯と辺りの家から洩れる明かりだけが二人を照らしている。 そんな中でも、ピルケースはすぐに見つかった。 倒れる黒服の、すぐ隣。 ちょうど手から取り落とされたように、それは黒服の手の先に転がっていた。 闇に紛れてしまいそうな黒い錠剤が、そこから零れ落ちている。 「これか……?」 山田は屈んで、それを拾い上げた。 周囲に散らばった錠剤を回収する事も忘れない。 それを黒服の目の届く範囲に持っていくと、もう言葉を発する事も苦しいのか、こくりとだけ、黒服が小さく頷いた。 取りあえず目的の物を見つけた事に山田は安堵して、ピルケースを黒服へ渡そうと手を伸ばしたのだが。 「……あれ? けどこれ渡しても飲めなくないか」 渡す直前で、気付いた。 そもそも取り出すまではこの黒服でもできたのである。 それを開け、口に運ぶ事が出来なかったからこそ、ピルケースはアスファルトの上に転がっていたのだ。 つまり、これを渡した所で、また落すのは目に見えているわけで 「……口移し?」 「…殺すぞ……」 思わず呟いた山田に、黒服がほとんど動かないはずの口を動かして反発した。 普段佳奈美に同じような冗談を口にしている黒服だが、今この生死にかかわるような状況でそれに応じるつもりはないらしい。 少しでも場を和ませようと努力したつもりの山田としては、何とも不本意な結果である。 「いや、冗談だって」 「(何慣レネェ冗談言ッテンダ、馬鹿野郎。ヤルナラサッサトヤッテズカラロウゼェ?)」 「何だと、俺だってジョークの一つや二つ……」 「(いじケテネェデサッサトヤレッテ言ッテンダヨ。死ヌゾ、コイツ)」 「くそ……これ、直接口に放り込めばいいのか?」 「……ああ……」 もはや突っ込む気力もなく、黒服は山田の問いにただ頷いた。 それを確認して、山田がピルケースから落ちた物ではない方の錠剤を一粒取り出す。 こんな黒い錠剤を飲んで大丈夫なのかと山田は少しだけ心配になったが、目の前で実際に吐血をしている人間が飲ませろと言っているのだ。 さすがに劇薬という事はないだろう。 手にした錠剤を、黒服の口へと持っていく。 血を吐き続ける口の中へ押し込むようにして錠剤を入れると、残った力を振り絞るようにして、黒服はその口を閉じた。 「……大丈夫か?」 「……ああ……」 先程と同じ、しかし少しだけ張りのある声で、黒服は答えた。 即効性の薬だったようで、どうやら窮地は脱したらしい。 その様子にほっとしながらも、山田は懐から携帯電話を取り出して 「取りあえず救急車、呼んだ方がいいだろ?」 「(ハァ? 都市伝説ヲ人間ノ医者ナンカニ見セチマッテモ良イノカヨ)」 「何を言っているのかこの悪魔は。この人は人間に決まってるだろう、うん、きっとそうに違いない」 山田の言葉を聞いて、黒服は少しだけ複雑そうな表情をしたのだが、内側に意識を集中させている山田はそれに気づかなかった。 「(……ソレ、テメェガ信ジテェダケジャネェカ)」 「いーや、初対面の人を都市伝説だと疑う方が異常なの。大体、『組織』の黒服だって全員が全員都市伝説なわけじゃないんだろ?」 「(知ラネェヨ。少ナクトモ大半ハ都市伝説ナンジャネェノ?)」 「だったらこの人も人間かも知れないだろ――――あれ?」 携帯で救急車を呼ぼうとしていた山田の顔が、怪訝そうに歪んだ。 先程から電源を入れようとボタンを押しているのだが、うんともすんとも返ってこない。 何故だろう、と山田は首を傾げかけて、ここ最近携帯の充電をし忘れていた事に気がついた。 大方、電池の残量に気づかずに電源を切って、そのまま自然消耗してしまったのだろう。 「……悪い、ちょっと電話ボックス探してくるから、ここで待っててくれ」 「(あほダナァ、オイ)」 「(誰にでもミスはあるだろ……)」 嘲笑するデビ田に脳内で言葉を返しながら、山田は黒服の返答を待たずに駈け出した。 その時の山田は、まだ知らない。 絶滅危惧種の電話ボックスを探す事が、どんなに大変な事なのかを。 ********************************************* 10分後、山田はようやく元いた場所へと走っていた。 意気揚々と駈け出したつもりが、思いのほか時間を食ってしまっている。 ようやく電話ボックスを見つけたものの、救急車が到着するまでにまた少し時間がかかってしまうだろう。 あの黒服の状態から見て、それまで持つかどうか。 「俺が子供の頃はそこら中にあったはずなのに……」 「(時代ガ違ェヨ、時代ガ。今ハ携帯電話ガ主流ダロォガ)」 「いや、それでも2、3分で見つけられると思ったんだけどな……」 「(甘ェナ。大体テメェハてれぽーとガ使エンダカラソレデ運ベバヨカッタダロウニヨォ)」 「…………あ」 「(ハッ! ダカラ鶏頭ナンダヨ、テメェハ)」 からかうデビ田の声に山田はうなだれて、最後の角を曲がった。 この先で、あの黒服が死んでいなければいいと、山田は半ば願うようにしていたのだが―――― 「……あれ?」 ――――その先に、あの黒服はいなかった。 それどころか、あれ程吐血していたはずの血の痕跡すらない。 「……え? あれ? 俺道間違えたっけ?」 「(勝手ニドッカ行ッチマッタンダロ。オレサマダッテ、テメェニ任セルクライナラ自分デ歩クゼェ?)」 「けど、あんな状態で……」 不安そうに呟いた山田の声は、誰もいない空間に飲まれて、消える。 後に救急車が到着して、山田は悪戯かと怒られた上に帰りが遅くなった事で恋人にも説教を喰らう事になるのだが 少なくとも今はあの黒服の事を、山田はただ心配していた。 【終】 前ページ次ページ連載 - 恐怖のサンタ